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現代のビジネスにおいて、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は単なるコミュニケーションツールを超え、企業の成長戦略における重要な要素となっています。しかし、多くの企業がSNS運用を「若手社員に任せておけばいい」と考えがちです。その結果、十分な成果が得られず、「SNSは効果が薄い」と誤解されるケースも少なくありません。

本記事では、SNSを「経営戦略」の一環として捉え直し、事業成長につなげるための基本的なアプローチを解説します。経営者や事業部長が理解すべきポイントを押さえながら、成功するSNS運用のヒントをお届けします。


1. なぜSNS運用を若手に任せるだけではダメなのか?

多くの企業では、「SNSは若手社員が得意そうだから」という理由で運用を任せるケースが見られます。しかし、このアプローチにはいくつかの問題点があります。

経営目線の欠如

若手社員がSNS運用を担当する場合、どうしても短期的な成果やフォロワー数といった表面的なKPIに注力しがちです。これでは、企業の中長期的な事業成長やブランド価値向上にはつながりません。

戦略的な整合性の不足

SNSはマーケティングだけでなく、営業や顧客対応、採用活動など多岐にわたる部門と連携する必要があります。経営視点から全体最適を考えた設計がなければ、施策がバラバラになり、効果が分散してしまいます。


2. SNSを「事業の成長戦略」に組み込むための考え方

SNS運用を成功させるためには、単なる業務タスクではなく「事業戦略」の一環として位置づける必要があります。以下のポイントを押さえましょう。

1. 明確な目的設定

まずは、SNS運用の目的を明確に定めます。新規顧客獲得、ブランド認知向上、既存顧客との関係強化など、企業の事業目標と整合する形で設定することが重要です。

2. 経営層の関与

経営層もSNS運用に一定の関心を持ち、戦略設計や進捗確認に関与することで、組織全体での一貫性が保たれます。

3. 他部門との連携

マーケティング部門だけでなく、営業、人事、カスタマーサポートといった部門とも連携し、SNS運用を全社的な取り組みとして推進します。


3. SNSのKPI設定:「フォロワー数」だけを追うのは間違い

SNS運用の成果を評価する際、多くの企業が「フォロワー数」や「いいね数」といった表面的な指標に注目しがちです。しかし、それだけでは不十分です。

KPI設定のポイント

以下のような多角的な指標を設定し、事業目標との関連性を意識しましょう。

  • エンゲージメント率:投稿に対する反応(いいね、コメント、シェアなど)の割合。
  • ウェブサイト誘導数:SNSから自社サイトへの流入数。
  • コンバージョン数:問い合わせや購入など具体的な成果につながった数。
  • ブランド認知度:定量的に測定することは難しいですが、アンケート調査や検索ボリューム分析などで把握可能。

4. 役職者が理解しておくべきSNSマーケティングの基本指標

役職者としては、以下の基本指標を理解しておくことで、部下への適切な指示や成果評価が可能になります。

  • リーチ:投稿がどれだけ多くの人に届いたか。
  • インプレッション:投稿が何回表示されたか。
  • クリック率(CTR):リンク付き投稿におけるクリック率。
  • ROI(投資対効果):SNS運用にかけたコストと得られた利益の比率。

これらの指標を定期的にモニタリングし、必要に応じて施策を調整します。


5. 成功するSNS運用チームの体制例

効果的なSNS運用には、適切なチーム体制が欠かせません。以下は理想的な体制例です。

チーム構成

  1. 戦略担当(リーダー)
    経営視点からSNS戦略全体を設計し、他部門との連携を図る。
  2. コンテンツ担当
    投稿内容の企画・制作を担当。クリエイティブスキルが求められる。
  3. 分析担当
    データ収集と分析を行い、施策改善に役立てる。
  4. 運用担当
    日々の投稿スケジュール管理やコメント対応など実務を担う。

6. 部下への適切な指示の出し方

役職者としては、部下に対して具体的かつ明確な指示を出すことが重要です。以下のポイントを意識しましょう。

  • 目的とゴールを共有
    SNS運用の目的や期待される成果を明確に伝えます。
  • 自由度と責任感をバランスよく
    若手社員にも一定の裁量権を与えつつ、責任感を持たせます。
  • 定期的なフィードバック
    定期的に進捗状況を確認し、改善点や成功事例についてフィードバックします。

7. まとめ:事業視点でSNS運用を成功させるポイント

SNS運用は「若手に任せるもの」ではなく、「経営戦略」の一環として位置づけるべきです。以下のポイントを押さえながら、事業成長につながるSNS戦略を構築しましょう。

  1. SNS運用の目的と役割を明確化する。
  2. 経営層も関与し、全社的な取り組みとして推進する。
  3. フォロワー数だけでなく、多角的なKPIを設定する。
  4. 適切なチーム体制と役割分担で運用効率を高める。
  5. 定期的なフィードバックと改善策で成果を最大化する。

SNSは正しく活用すれば、企業ブランディングや売上拡大に大きく貢献します。経営視点で戦略的に取り組み、その可能性を最大限引き出しましょう。

森 寛弘

株式会社XROSSOVER(クロスオーバー) 代表取締役/CEO 企業ブランディングにおけるデジタルマーケティングを支援し、コミュニケーション戦略支援、コンサルティング、デジタルプロモーションを実施するデジタルマーケター。 主な著作 ・結果が出る[SNSマーケティング]てっぱん法則(扶桑社、2018年11月23日) ・デジタルでブランドは作れるか SNSを使ったデジタルブランディング(日経広告研究所報 310号 2020年4月1日)